太陽光発電はどんな素材でできているの?その特徴を解説!
2023/05/25
「太陽光パネルにはたくさんの種類があるって聞いたけど本当?」、「太陽光パネルの素材が違えば何が違うの?」、「人体に悪影響を与える素材があるって聞いたけど本当?」など太陽光発電システムの普及と共に太陽光パネルの素材に関する問い合わせが増えています。
太陽光パネルに使われている素材が違えば、さまざなことが変わってきます。
今回は太陽光パネルの素材について詳しく説明します。
目次
太陽光発電の素材はひとつではない?
2023(令和5)年現在、国内で販売されてる太陽光パネルの素材は1種類ではありません。
太陽光パネルの素材は、各メーカーによって違いますし同じメーカーの中でも違うこともあります。
太陽光パネルの表面だけを見ると、見た目に違いがないため「どれを選んでも同じでしょう?」と考えている人も多いはずです。
実は太陽光パネルの素材によっては、発電量や発電効率・設置費用が大きく変わってくるので購入する時は、太陽光パネルの素材を見てから購入しないと後悔するケースが多いです。
太陽光発電の素材の種類について
2023(令和5)年現在販売されている太陽光パネルを大きく分けると「シリコン系」・「化合物系」・「量子ドット」・「有機系」の4種類があります。
素材によっては細分化されてパネルもあります。
太陽光パネルの素材の種類と特徴について詳しく説明します。
シリコン
2023(令和5)年5月現在、販売されている太陽光パネルの中でも最も多く販売されているのが、シリコン系の太陽光パネルです。
シリコンの原料となるケイ石のなかにはケイ素(si=シリコン)が含まれています。
ケイ石を溶かして冷やしたできた塊が「インゴット」と呼ばれています。
このインゴットを削ってさまざまな太陽光パネルの素材になります。
インゴットを削ってできた素材を使ってできた太陽光パネルが「単結晶シリコン」・「多結晶シリコン」・「薄膜シリコン」の3種類です。
単結晶・多結晶・薄膜シリコンの太陽光パネルの特徴について詳しく説明します。
単結晶シリコン
単結晶シリコンの太陽光パネルは、歴史が古く世界中で普及している製品の1つです。
原料であるケイ石を溶かしたできたインゴットを削ってできたのが、単結晶シリコンです。
単結晶シリコンの太陽光パネルは、純度の高いシリコンを使用していることからライフタイムが長いため、変換効率が高く発電量を確保できます。
2023(令和5)年現在、販売されている単結晶シリコンの発電効率は、メーカーによって多少の違いはありますが20%前後です。
シリコン原子が規則正しく並んでいるため太陽光パネルの表面は、黒っぽく見えます。
変換効率が高く発電量の多い単結晶シリコン太陽光パネルですが、高温に弱いことや他素材の太陽光パネルよりも製造に時間が掛かるため設置費用が高額です。
※ライフタイムとは、太陽光パネルが光を受けた時に発電に繋がる電子が再結合して無くなるまでの時間を指します。
太陽光パネルの発電効率に関する詳しい記事はこちら⇒太陽光発電の効率って?発電効率と計算方法を解説!
多結晶シリコン
多結晶シリコンとは、単結晶シリコンのインゴットを作るとき出た破片(ウェーハ)を溶かして固めた製品を指します。
ウエーハを溶かしてできた太陽光パネルのため表面は、大理石のような見た目になります。
ウエーハを使って太陽光パネルを製造しているため、生産コストが低くく製造時間が短いため単結晶シリコン太陽光パネルよりも設置費用を抑えられますし、高温なったとしても発電量が落ちにくくなっているというメリットがあります。
ですが、単結晶シリコン太陽光パネルよりもシリコンの純度が低いため、発電効率は15%~18%と低めになっています。
以前までは、単結晶シリコン太陽光パネルより多結晶シリコンのほうが家庭用として普及していましたが、現在は家庭用よりも産業用として設置されています。
産業用太陽光発電システムに関する詳しい記事はこちら⇒太陽光発電投資は失敗する?リスクやメリットを解説!
薄膜シリコン
薄膜シリコンは別名、「アモルファスシリコン」、「微結晶シリコン」とも呼ばれています。
薄膜シリコンは、単結晶や多結晶シリコン太陽光パネルほど有名ではありませんが、実は電卓や太陽光で充電する時計に用いられるなど私たちの生活に深く関わっている素材です。
最大の特徴は、電卓や太陽光で充電する時計に使われるほど薄くて軽量化されているところです。
薄膜シリコンのなかで最も使われているアモルファスシリコンと呼ばれる素材です。
高温に強いことや単結晶・多結晶シリコンよりも材料費が安く製造時間も短いため、設置費用を抑えられるというメリットを持っています。
アモルファスシリコンを使用した太陽光パネルは、単結晶型シリコンよりも水素などの不純物が多く含まれてるため発電効率が10%以下というデメリットも持っています。
ハイブリッド
ハイブリッドは別名「多接合太陽電池」と呼ばれています。
そもそもハイブリッドとは、2つの異なる太陽光パネルを組み合わせて作られた太陽光パネルを指します。
2023(令和5)年現在販売されているハイブリッドの太陽光パネルは、単結晶シリコンと薄膜シリコンを組み合わせています。
単結晶シリコンは、発電効率が良いのに対して高温に弱いため夏場は発電量が落ちると言われています。
薄膜シリコンは、高温には強いが発電効率が10%以下というデメリットを持っています。
単結晶シリコンと薄膜シリコンの良いところだけを使った太陽光パネルのため、発電効率が落ちると言われている夏場でもしっかり発電量が確保できます。
日本国内では、PanasonicのHITや長州産業のプレミアムブルーといったハイブリッド太陽光パネルが販売されています。
太陽光パネルのデメリットを打ち消してくれるハイブリッド太陽光パネルですが、他の太陽光パネルと比べると製造過程が複雑だったり製造に時間が掛かるため設置費用は高くなっています。
Panasonic家庭用太陽光発電システムに関する詳しい記事はこちら⇒パナソニックの太陽光発電の特徴は?撤退理由や価格・口コミを解説!
長州産業太陽光発電システムに関する詳しい記事はこちら⇒長州産業の太陽光発電の特徴は?評判や価格について解説!
化合物
化合物系太陽光パネルとは、シリコン以外の物質を混ぜ合わせて作られた製品を指します。
化合物系太陽光パネルに使われている主な物質は、銅・インジウム・セレンなどです。
化合物系太陽光パネルは、シリコンが使われていないため省資源・低コストで量産できて、経年劣化もシリコン系の太陽光パネルと比較すると少ないのが特徴です。
また、太陽光の吸収率もシリコン系の太陽光パネルよりも高いと実験で実証されています。
太陽光パネルを製造する時の二酸化炭素排出量を抑えられるため、環境に配慮した製品とも言えます。
化合物系太陽光パネルは、シリコン系の太陽光パネルよりも発電効率が悪いというデメリットがあります。
2023(令和5)年5月現在、日本国内で化合物系太陽光パネルを販売しているのは、出光興産の子会社であるソーラーフロンティアのみになります。
化合物系太陽光パネルは大きく分けると、「CIS」・「CIGS」・「CdTe」の3種類あります。
それぞれの太陽光パネルについて説明します。
ソーラーフロンティアに関する詳しい記事はこちら⇒太陽光発電おすすめメーカー10社比較!特徴から選びかたを解説
CIS
CISとは、銅(Cu)・インジウム(Indium)・セレン(Selenium)の頭文字を取った太陽光パネルを指します。
2023(令和5)年5月現在販売されている化合物系太陽光パネルのなかでは最も売れている製品です。
CIS太陽光パネルは、光の吸収率がシリコン系太陽光パネルよりも良いというメリットを持っていて発電層を薄く作れます。
薄さを表す単位はマイクロメートルで表記されますが、シリコン系太陽光パネルの発電層の薄さが200~300に対して、CISは2~3程度とCIS太陽光パネルの薄さが分かります。
また、温まりにくさを示す「温度係数(ppm/℃)」はシリコン系よりも高く、炎天下になる真夏でも太陽光パネルが温まりにくいため発電効率が下がりにくくなっています。
逆に曇りや雨の日が続いたとしても極端に発電量が落ちることはありません。
ですが、CIS太陽光パネルはシリコン系の発電効率が20%前後に対して、13%~14%前後と低くなっているのがデメリットです。
CIGS
CIGS太陽光パネルとは、基本的にはCISと同じ性能です。
CIGS太陽光パネルはCICにGa(ガリウム)を混ぜ合わせて製品です。
ガリウムを加えて発電の時に使われる電子の流れをよりスムーズにしたことによってCIS太陽光パネルよりも発電量を増やすことに成功しました。
CIS太陽光パネルと同様に発電効率が悪いことと材料のなかに、有害物質であるカドミウムが含まれている製品がある可能性あるため、処分時の影響が問題視されているのがデメリットです。
CdTe
CdTe太陽光パネルは、材料のなかにカドミウムが含まれている製品を指します。
CdTe太陽光パネルのメリットは、低コストで製造できることです。
太陽光発電システムで重要な光吸収の性能に優れていて、製造時間も他の太陽光パネルよりも短く高品質で大面積の太陽光パネルを作るのに適しています。
そのため、世界中では設置件数が多い太陽光パネルでもあります。
生産コストを抑えられるというメリットがある反面、他の化合物系の太陽光パネルと同様に発電効率が悪いというデメリットがあります。
量子ドット
量子ドットは理論上、発電効率が75%・実測では30%を超えるとも言われており、他の太陽光パネルよりも高性能の第3世代太陽電池を指します。
直径10mm程度の小さいな結晶であって周囲をポテンシャル障壁によって3次元的に囲まれた構造しています。
従来の太陽光パネルとは構造が違うため、光の吸収率だけでなく今まで吸収できなかった紫外線波長の光も吸収できるので、高いエネルギーをより効率良く電気に変えられるになりました。
量子ドット太陽光パネルは、販売までに至っていませんが発電効率は20%前後までになって来ています。
高性能の量子ドット太陽光パネルが販売されていない理由は、パネル素材に希少物質であるインジウムが使われていたり、物質の特性上もろかったり、製造時間・コストが掛かるため設置費用が高くなっているためです
今後、注目されている太陽光パネルでもあります。
<量子ドット太陽光パネル仕組み>
有機
有機系とは、有機物を使って製造された太陽光パネルを指します。
有機物太陽光パネルは、2023(令和5)年5月現在研究段階で実用化が期待されている太陽光パネルです。
有機系太陽光パネルには、有機薄膜と色素増感の2種類があります。
有機薄膜と色素増感の特徴について説明します。
有機薄膜
有機薄膜は、現在研究段階で実用化が期待されている太陽光パネルです。
実用化されたら軽量で薄い太陽光パネルができるため低コストで大量生産が可能になります。
太陽光パネルそのものが薄いためプリンターなどで着色もできます。
薄い太陽光パネルなので、今まで設置できなかった丸い屋根や特殊な屋根にも設置できるようになります。
また、実用化ができれば農業などで使われるブルーシートを有機薄膜の太陽光パネルで作れるようになれば、太陽光発電業界の常識を覆す技術になります。
色素増感
色素増感も有機薄膜と同様に現在研究段階の太陽光パネルです。
色素増感の特徴は、太陽光パネル表面の色素を変えられることです。
2023(令和5)年現在販売されている太陽光パネルの表面の色は、メーカーによって多少の違いはありますが黒色・紺色・青色の3種類です。
そのため、実用化されたら自宅の屋根にこだわりがあったり景観を気にしたりして、太陽光パネルを設置しなかった自宅でも設置できるようになります。
また、着色もできるのでデザイン性の高い太陽光パネルを製造できます。
色素増感も有機薄膜と同様に低コストで生産可能なため将来が期待されている太陽光パネルです。
太陽光発電に含まれる物質は?
2023(令和5)年現在、日本国内で販売されている太陽光パネルには、さまざまな物質が含まれています。
そのなかでも人体や環境に悪影響を与える可能性が高いとされているのが、「セレン」・「カドミウム」・「鉛」・「ヒ素」の4種類です。
それぞれの物質がなぜ人体や環境に悪影響を与える可能性が高いと言われている理由について詳しく説明します。
セレン
セレン(Selenium)は、納豆やオートミール、魚などの食品を含まれている成分の1つです。
食品に含まれているため安全そうに感じますが実際のところはそういう訳でもありません。
セレンは、毒性が強く過剰摂取を繰り返すと下痢・脱毛・疲労感などの症状が現れます。
日本で太陽光発電システムが本格的に販売され始めた2009(平成21)年~2012(平成24)年頃までは、セレンを太陽光パネルの半導体として使っているメーカーも多かったですが、2023(令和5)5月現在ではセレンを半導体として使っているメーカーはごくわずかになっています。
カドミウム
カドミウム(Cd)は、もともと自然界にある物質で地中に多く含まれている物質です。
セレンと同様にもともと自然界にある物質だからといって人体・環境に悪影響を与えない訳ではありません。
カドミウムを大量に摂取すると腎臓に蓄積して腎機能障害を引き起こす可能性があると言われています。
カドミウムが原因の代表的な病気が四大公害病の1つであるイタイイタイ病です。
イタイイタイ病は、富山県神通川流域で起きた病気で、大正時代から発生していて神岡鉱山(岐阜県飛騨市)から流出したカドミウムが河川を汚染し、神通川用水を使って育った農作物や魚を通じて体内にカドミウムが蓄積された結果、健康被害を引き起こしまた。
イタイイタイ病に掛かると、骨折を繰り返すようのが特徴で全身の痛みのなかで、起き上がれなくなって寝込んでしまうケースがあります。
重症になると激痛で食事も採れなくなって衰弱して死に至ることもあります。
この病気に掛かった人々が「イタイ、イタイ」と泣き叫びながら病院にいったことからこの病名が付けられます。
カドミウムが含まれた太陽光パネルを販売している海外メーカーもありますが、日本ではイタイイタイ病の経験から販売は禁止されています。
※四大公害病とは、イタイイタイ病・四日市ぜんそく・新潟水俣病・熊本水俣病の総称です。
参考資料:富山県HP
鉛
鉛(Pb)が太陽光パネルの素材として使われている理由は、太陽光パネルの設置費用です。
日本で最も流通しているシリコン系太陽光パネルと比べると、設置費用を安く抑えられるという事で多くの太陽光パネルメーカーが鉛を使っていました。
ですが、鉛は決して人体にいい影響を与える物質でありません。
鉛が人体への影響として大きいのが「鉛中毒」です。
鉛中毒になると軽症なもので疲労感や睡眠不足、重症化すると脳を損傷させて死に至るケースもあります。
鉛の恐ろしいところは、体内に吸収されると9割以上が脳に付着して半分が体内から排出されるまでに5年は掛かると言われています。
2023年現在では、鉛を使った太陽光パネルは販売されていません。
ヒ素
ヒ素(As)には、有機態と無機態の2種類があります。
有機態のヒ素は、ひじきなどの海藻に多く含まれていますが、毒性はほとんどなく摂取したとしても短時間で体内に排出されます。
無機態のヒ素は、非常に毒性が強く大量に摂取すると発熱・下痢・咳などの症状が出ます。
日本では、過去にヒ素を太陽光パネルに使用していた時期がありました。
海外では、ヒ素を使って太陽光パネルを製造すると発電効率が理論上高くなるということで使用されていました。
ですが、製造コストが高く採算が合わないため、日本市場では出回っていません。
太陽光発電の素材による違いはあるの?
太陽光パネルは使われる素材によってさまざまな違いがあります。
太陽光パネルの素材による違いは全部で2つあるので、詳しく説明します。
発電量や発電効率が良い
太陽光パネルの素材が変われば発電量や発電効率が大きく変わります。
太陽光パネルの素材別発電効率が次の通りです。
太陽光パネルの素材が変われば発電効率・発電量や経年劣化の早さも変わります。
2023年現在販売されている太陽光パネルで最も経年劣化しても発電効率が落ちないと言われているのが単結晶シリコン対して、薄膜シリコンが最も発電効率が落ちると言われています。
家庭用太陽光発電システムを設置する場合は、価格だけでなく発電効率や寿命を考慮して購入すると良いでしょう。
太陽光パネルの寿命に関する詳しい記事はこちら⇒太陽光パネルの寿命は何年?耐用年数との違いや劣化させないためのテクニック
設置費用
太陽光パネルの素材が変われば設置費用が変わります。
太陽光パネルの価格は、「使われている素材」・「製造時間」によって価格が変わります。
経済産業省の調達価格等算定委員会が作成した「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」を見ると、2023(令和5)年5年度の太陽光発電システム1kWあたりの販売価格は家庭用で255,000円、産業用(10kW以上50kW未満)で178,000円・50kW以上250kW未満で117,000円程度で販売されています。
家庭用太陽光発電システムに関しては、単結晶シリコンやハイブリッドが使われているため産業用に比べると高くなっています。
一方産業用は、多結晶や化合物系の太陽光パネルを使われていることが多かったり、大量の枚数を設置したりするため家庭用に比べると設置費用が安くなっています。
※税込価格で表記しています。
<家庭用太陽発電システム設置費用>
<産業用太陽光発電システム設置費用>
太陽光発電システムの設置費用に関する詳しい記事はこちら⇒太陽光発電の設置費用はいくら?相場感や補助金について解説!
出典:調達価格等算定委員会「令和5年度以降調達価格等に関する意見(令和5年3月31日差し替え版)」
太陽光素材のまとめ
みなさんいかがだったでしょうか?
今回のお話をまとめると、
・2023(令和5)年現在販売されている太陽光パネルは、大きく分けると「シリコン系」・「化合物系」・「有機系」・「量子ドット」の4種類ある!
・太陽光パネルに含まれている物質で人体に影響を与えるのは、「セレン」・「カドミウム」・「鉛」・「ヒ素」の4種類!
・太陽光パネルの素材が変われば「発電効率・発電量」と「設置費用」が変わる!
太陽光パネルは使われている素材によって発電効率・発電量・寿命・設置費用が変わります。
使われている素材によっては、人体や環境に悪影響を与える可能の素材もあります。
太陽光パネルを選ぶ時は、価格だけでなく素材も検討材料しておくと良いでしょう。
エコの王様には、太陽光パネルに詳しいスタッフがおりますので、分からないことがあればお気軽にご相談下さい!
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